さて、まずは皆さん、現在プラハのシンボルともなっている聖ヴィート大聖堂も立つプラハ城王宮敷地内、この王宮は本来観光施設ではないという事はご存知でしたか?
プラハ城というのはギネスブックでも「Largest ancient castle」として登録されている、「最も大きな古城」として有名です。
Guinness World Records / Largest ancient castle
https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/69343-largest-ancient-castle
このギネスにプラハ城が登録されている事については、「なんでやねん」と、まぁ色々とあちこちで言われてもいますが…、「城ってーのは一体なんぞ?」というところからよくよく考えて頂くと
”千年以上も前に築かれ未だに現役であり続ける城”
というものでは世界最大の城はプラハ城しかない事が分かって頂けるかと思います。
この辺の話は突き詰めると「お城とは…」とかいう話になってまた止まらなくなるので、そのうち機会があれば書いてみようかと思いますが…、ひとまずその
「プラハ城王宮の中庭は公共スペースか否か」
という裁判が長らく行われていまして、その判決が先日チェコ最高裁判所から出されました。
「プラハ城王宮中庭は公共スペースではない」
…え?普通にみんな物凄い数の観光客がまるで街なかの公園の様に勝手に出入りしてるんですけど?
と、プラハにいらっしゃった方は思うかもしれませんが、チェコの最高裁では王宮の敷地はプライベート・スペースとされました。プライベート・スペースというからには私有地という事ですかね?
ひとまずは、一般開放はしてはいますが「プラハ城の中庭はルールを守らなければならない保護された空間であり、制限なく誰もがアクセスできる場所ではない。」との判決なので、つまりはプラハ城当局がふさわしくないと判断した人間や、どこかの団体が集会などを行う事はできませんよ、という事なんです。なので観光客はルールを守ってくれるのなら勝手に入ってきていいですよ、と、まぁそーゆー事ですね。いやまぁなんか当たり前の事のような気もしますが。
これ、私がガイドとしてご案内する時にはいつも説明させて頂いているのですが、現在のプラハ城王宮は「大統領府」なんです。かつて昔の国家元首は皇帝や王でしたが現在は大統領なので、プラハ城王宮は大統領府となっているんです。そう言われてみれば分かりやすい話かと思います。
でも内閣総理大臣公邸のような公邸ではないので、現在は国家元首であるチェコの大統領は住んではいません。あくまで仕事場で官邸的なものです。
日本の首相官邸は公邸と同じ国会議事堂の裏の永田町二丁目3番1号にあって同じ敷地内にある建物ですけどね。
アメリカのホワイトハウスなんかの場合は公邸でもあり官邸でもある建物です。
その辺、各国様々でややこしいんですけど…ひとまず現在のプラハ城の王宮は大統領府であり大統領官邸といった意味合いの建物です。
で、チェコの大統領公邸はどこにあるかというと、王宮の目と鼻の先でLumbe Villaと呼ばれる徒歩だと10分くらいのとこです。一応通りにあるお勝手口みたいなとこに警察官が一人立ってますが、あまりに警備もなく静かなので誰も大統領公邸とは思わず横を通り過ぎているかと思います。通りからも丸見えなので「ここは国家元首である大統領公邸ですよ」と言うと「えぇっ!?これ!?」と例外なく皆さん驚かれます。余計なお世話ですけど、国家元首の公邸がこれでいいのか?と見てる方が不安になります。
ちなみに、アメリカ大使の官邸はアメリカ大使館よりもデカい「これって宮殿だよね」といった建物です。それよりデカいのはもはやロシア大使館しかありません。サッカーのスタジアムくらいの敷地面積があります。
それらと比較したらチェコの国家元首のお住まいはずいぶんと小さく質素で、チェコの大統領公邸よりも立派な家に住んでいる一般人はまぁたくさんいますよね。
そんなわけで、そんなところへめちゃくちゃ多くの観光客が毎日勝手に出入りしているというわけです。
こんな国はそうそうないのでただの観光施設と思われがちですが…実はチェコの国家元首がいるんですよ、あそこには。
たまに国家元首、その辺を普通に歩いています。
ガイドをしていると、お付きの人が一人てくてくやってきて
「ちょっと今そこに大統領いるんだけど…、正門前だけ空けて通してもらってもいいですか?ごめんなさい。」
と言われて振り向くと国家元首いてタマゲます。で、大統領がお付きの人と二人だけでトコトコ歩いてやってきます。王宮正門前フラチャニ広場のある某レストランによく食べに行くらしいので(このレストランもまた観光客がよく来る見晴らしの良いレストラン)、お昼を食べた後かもしれません。とんでもなくフリーダムな国家元首です。
これはお客さん達もサプライズで、なかなかなイケオジ大統領の写真を間近でバシバシ撮りまくります。まるで大御所芸能人。
チェコの現国家元首であるペトル・パヴェル大統領とは、そんな感じの人です。
と、言う事で、プラハ城の王宮敷地内は公共空間でも観光施設でもなくチェコ国家元首が働く大統領府なんです。
その事を今回チェコの最高裁でははっきりと示しました。
て、事はそれまではかなり曖昧だったという事ですね…。
チェコの国家元首はどこまでフランクなのでしょうか。
チェコっぽい一面が見えた今回の判決でした!
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